メモ置き場

機械翻訳の結果

提督、北欧にて艦娘の聖遺物を求めんとして核開発の嫌疑を懸けらるるの事

余は提督*1である。元をただせば、WW2を中心としたオタクであったので、艦これを始めてしまうのはまあしょうがないことであった。

やや長い前振り 併せて見栄が引き起こす帰結について

さて、この話は2018年、このゲームにスウェーデン航空巡洋艦、Gotlandがキャラクターとして加えられたことに端を発する。
この艦、なにせ中立国海軍所属でWikipediaはじめネットの情報は極端に薄い。海戦史上に一瞬名前が出てくるのは、独戦艦・ビスマルク出撃を英国に”密告”したという文脈なのである*2
艦これwikiに時たま小ネタを追加していた身としては、Gotlandの記述が薄いことをいいことに、あっちこっちのページにグーグル翻訳をかまして、せっせと穴埋めをする。原動力は無名なのに必ず潜む承認欲求だ。そのソースの中に、スウェーデンデジタルミュージアムDigitaltMuseumがある。この下に海事博物館があり、生写真などが惜しげもなく開放されている。

さて、そこから2年。以来時間を見てポチポチweb漁りを続けていたが、若干の疑問が解けていなかった。この船、戦後に改修を受け装備が若干改変されているのだが、その詳細が把握できぬ。ケチってちゃんと文献を買わないからこういう基本的な話が分からんのである。無論わからずとも良い情報ではあるのだが、こういうところを気にしだすときになるのが悪いところだ。
ある時、件のデジタルミュージアムに、ゴトランドの図面が採録されていることを思い出した。ただし、解像度が低いので詳細は読み取れない。

digitaltmuseum.se
なんとかこれが読めぬものか、ためすがめすしていたある日。いままで見落としていたこのページの買い物かごボタンに気づいたのである。

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問題のアイコン

恐る恐るボタンを押してポチポチと進めていると、どうやら高解像版が買えるようだ。とはいえ一枚50万円とでも言われたら恐ろしい。慎重に価格表
www.marinmuseum.se
を見る。
そこにはこうあった。

Det går även att kostnadsfritt beställa upp till fem högupplösta bildfiler per månad av fotografier i Marinmuseums fotoarkiv. Högupplösta bildfiler kan användas till tryck i högre kvalitet. Vid beställning av fler än fem bildfiler per månad utgår en administrativ avgift, se prislista nedan. Beställning av högupplösta bildfiler kan göras via DigitaltMuseum eller registrator@smtm.se

読めまい。当然こちらも読めない。これをグーグル先生にぶち込むと、こうなる。

海洋博物館の写真アーカイブにある写真の高解像度画像ファイルを月に最大5つまで無料で注文することもできます。高解像度の画像ファイルを使用して、より高品質の印刷を行うことができます。月に5つ以上の画像ファイルを注文する場合、管理手数料が支払われます。以下の価格表を参照してください。高解像度の画像ファイルの注文は、DigitaltMuseumまたはregistrator@smtm.seから行うことができます。

写真アーカイブにある写真の高解像度画像ファイルを月に最大5つまで無料で注文することもできます 月に最大5つまで無料 月に最大5つまで無料 月に最大5つまで無料
ハイ無料!
ウッキウキで即注文。その次の日、早速にメールが来る*3。英語であるが、これもグーグル翻訳行きである。

Dear Mr.イベ茶
高解像度の写真を含むファイルには250スウェーデンクローナ(SEK)の費用がかかることに注意してください*4。図面を注文しますか?

んん? 慌てて料金表ページをよく見る。件のくだりの下に

写真と図面の注文の価格表
私たちの写真や図面のほとんどは、digitaltmuseum.seから直接ダウンロードできます。海洋博物館の写真アーカイブにある写真の高解像度画像ファイルを月に最大5つまで無料で注文することもできます。これに加えて、次の価格表が適用されます。
デジタル画像(高解像度、TIFF、元のサイズ)SEK 200 + VAT = SEK 250

とあるではないか。
つまり、ファイル5つまでは手数料取らないよ、と言っているようである。6枚以上頼むとエクストラチャージがかかるよ、という布告であったらしいのである。思えば早とちりに生きてきた人生だった。進学も難易度選択も凡そ売買も保険も金融商品も細かい約款なぞすべて無視しして生きてきた。そのツケをまたもや支払うことになるのである。嗚呼。

しかし高々250SEK(≒3000円ぐらい)。ここで「あ、有料だったら、いいです」とは言えぬ。まして、もはやここまで至った邦人はそうはおるまい。ヤパンスキーはケチね貧乏人ねー!とでも思われたら我が同胞に全く面目次第もない。電子的なコピーとはいえ、いわば分身、聖遺物(グッズ)と言って過言ではあるまい。カネは当分眉毛でも食って暮らせば足りるであろう。返信だ。
承知致しております。お支払方法を教えてください」。
この見栄含みの返事が、事態を悪化させるのである

国際送金の困難性、併せて提督の嗤われるべき生態が明らかになること

オーダーのメールに返ってきたのは、正式な請求書で、支払先は博物館。支払方法は、銀行振り込みである。
銀行振り込み
当節、国際取引は間違いなくカード決済である。冷静に考えたらこの時、「すんません、楽天visaカードで払えませんか?」と聞くべきであったのである。無論早とちり人生である、そのようなことはせず要求には淡々と応えるのみだ。
さて、国内送金なら、相手の口座番号と銀行支店番号か何かを間違えずに入力してボタンを押せば完了する。手数料だって数百円のことである。やったことのないものは恐ろしい。国際送金だって同じようなもんだ、ネットバンキングがあれば余裕やろ。これが慢心であった。

早速メーンバンクのサイトからFAQをたどり国際送金のやり方を調べてよう。ついでに他行も見てみよう。数刻の後、分かったのは以下の2点であった。

  • 国際送金には、マイナンバーの登録が必要である。
  • 手数料は3000円。

マイナンバーは通知書類がどこかにあったはずだ。しかし3000円のものに、3000円の手数料で倍プッシュされてはさすがに困る。本体料金の沽券にかかわるではないか。他行は、と調べれば恐ろしきかな護送船団の後遺症、協定価格でも決めているかのように横並び。中には強気の5000円というところまであるのだ。

支払期限は14日間。ただし、送金は最大3営業日がかかるので実質使えるのは10日余である。6000円か、支払わずバックレるか、それもメンツがな・・・。と思った時、ネット専業銀行を当たっていないことを思い出した。淡い期待を抱いて調べると、丁度口座を持っている1行はなんと手数料が半額、1000円台なのであった。楽天銀行である。
諸君嗤うがいい、ご立派な事を書いておきながら楽天カードマ-ンであるだけでなく、銀行にすらその経済圏に搦め取られた三木谷の家畜なのである*5。しかしおかげで支払いにめどが立った。あとは実行あるのみ。

家探しをしてマイナンバーを探り当て(3日かかった)、楽天銀のスマホアプリを入れて関係書類を撮影して送信し(夜にやったらどうしたってぶれたので昼を待つため2日かかった)、何らかの瑕疵で送金者としての登録が断られぬか肝を冷やして待ち(翌日ぐらいにはちゃんと登録された)、ようやく送金手続きの準備が整ったのである。〆日まで相当ギリギリであった。

提督、核開発の嫌疑を懸けらるるの事 然るに取引は整然と終了する事

全て前哨戦が終わり、ここでようやく最後の一撃を繰り出すに至った。幾多の壁を越えた先の海外送金用ページを初めて拝むこととなる。
たどり着いて分かったことに、海外送金はどうも決まった相手にくりかえし用があるタイプの、貿易等BtoB的利用しか想定されていない。故に、相手先を一々登録することから始めねばならぬ。なお、送金相手行はなぜかデンマーク系銀行であった。支店住所を調べるのが若干の難儀さを追加した。あの博物館はスウェーデン軍の一翼を担う機関であるはずなのに、何を考えているのか。

送金額は若干負かった200SEK。これを入力した次の欄が問題だ。必須事項として送金目的の入力を要求される。

そのほぼすべての項目に「核活動・大型通常兵器等の供給に関するもの以外」と注釈がつき、最後の1項目だけは「核活動、生物兵器、ミサイル関連etc.等の開発にかかわるもの」である。

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この項目を選ぶ奴がいるのか

この最終項、米の所得税申告書にあるという「犯罪による所得」*6と同じあることは明々白々である。ミリオタとはいえ平穏無事に生活して数十年余、まさか己の行為に微かにとはいえ核開発疑惑を向けられるとは思わなかった。

そして今回取引するものといえば、軍艦の図面である。外形だけに注目すれば兵器(の図)の取引、「通常兵器の開発にかかわるもの」では、ある。むろん、これをいまさら開発建造する能力も意思も資金力*7も理由も価値もないが。
デジタルデータを購入するのはいったいサービスの取引でいいのか。選択肢、一番下が適切ではあるまいか。これを真面目に申告したら絶対に現金はどこかで差し止められる。官憲も黙ってはおるまい。我が趣味のためにはやむを得ぬ、これはあくまで画像データの対価だ。選択肢は自ずと明らかであった。

すべての入力を緊張と指差し確認を交えて行い、取引を申し込む。すると次の画面では再び誓約を求めてくる。

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見よ、我が国経済制裁の最前線を

これだけは関係ないので心晴れやかにお誓い申し上げることができる。該当いたしません!
最後のボタンをしめやかにクリックし、我が精鋭4000円余の攻撃隊は飛び去った(口座から)。


とはいえ、心は穏やかではない。振込先が違ってはいないか、あの住所は本当に支店のものか、デカい容量のメールが弾かれムダ金にならぬか、Gメンが核開発並びに虚偽申告容疑で踏み込んで来ぬか・・・。ややおびえながら待つことわずか1日。最後のメールが来た。

Dear Mr.イベ茶
Marinmuseum / Karlskronaで注文した図面を添付しました。
よろしくお願いします
こちらからファイルをダウンロードしてください

心配には及ばず、ファイルは市井のアップローダーから自分で落とすのであった。立派な約700MBのTIFFファイルであった。画像幅は1000ミリ余である。未だ印刷はできていない。

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こんな感じ。なお原寸は1/200

思い出したように翻訳を試みたり、小ネタを見つけたりして楽しんでいる。値段と心労と濡れ衣の価値はあるはずである。

お題「#買って良かった2020

*1:万万が一誤解を受けぬように注記をするが、ブラウザゲーム艦隊これくしょんプレイヤーを指すかその自称である

*2:歴史的伝言ゲームの末であろう、とあるページではロンドンに直接打電したことになっていた。若干引いた

*3:余談ではあるが、この時の担当者がクヌート氏であり北欧を感じた

*4:後に請求書段階になってから、この注文が海外からであったことに気づいたようでVAT分は負けてくれた

*5:言い訳をすると、ネット売買のために前身行で口座を開いて移行させられていたのである

*6:申告すれば通報、しなければアル・カポネと同様脱税で捕縛せんとする米帝の卑劣な罠

*7:なお、当時かかった建造費用は現貨にして80億円とされる